【D】どうなる、ドイツの「性自認」?!

Leben

現在フランスのパリではオリンピックが開催され、各国非常に賑わいを見せております。一方で、男性競技・女性競技の区別に関して色々と物議を醸しているシーンも散見されます。昨今ヨーロッパでは「性自認」や「自己決定」について頻繁に議論されており、従来の価値観を否定し、多様性を認めて行こうという考え方が主流になって来ているようです。今回は、オリンピック大会の裏でドイツ国内で成立した「とある法律」について書きます。

2024年8月1日「das Selbstbestimmungsgesetz(自己決定法)」が施行されました。ドイツ国内に1980年から存在していた「das Transsexuellengesetz (TSG/トランスセクシャル法)」は、人間の尊厳である自己決定・自己実現の観点から「違憲である」とし、「das Transsexuellengesetz (TSG/トランスセクシャル法)」を廃止し、それに代わる法律として制定されました。「自己決定法」では、戸籍上の性別の記載と名称を変更するための要件を規定しています。「変更登録の3ヵ月前申請ルール」が規定されており、実務上2段階で施行されます。例えば、現在男性として戸籍上登録されている方が、今後女性として登録をされたい場合や、新たな名称に変更されたい場合、最短で今年2024年8月1日に変更の申請を行い、2024年11月1日からは戸籍上女性であったり、新たな名称を名乗れるようになるというものです。この法の最大の特徴は、裁判上の手続きであったり、医師からの診断書の提出、専門家意見などを求められることなく、「自称で」変更手続きが出来るようになるという点です。

留意すべき点は下記の通りです。

  • 「変更登録の3ヵ月前申請ルール」:戸籍所への変更申請は3ヵ月前に行われること。
  • 1年間の変更制限:既に行われた変更から1年以内に性別や名称を変更出来ない。
  • 未成年者の制限:14歳未満の者は自らの意思のみで変更申請が出来ず、法定代理人の同意が必要。14歳以上の場合は、自らの意思で変更申請は認められるが、その効力は法定代理人の同意が必要。

という制限があり、他人の過去の性別や姓名を調べて公開することは禁止されています。開示によって意図的に被害を受けた場合、最大1万ユーロの罰金の対象となります。

一方、現在法律上の取引で許されていることは将来も許され、現在禁止されていることは禁止されたままであり、スポーツの自主性も、この法律によって影響を受けることはない、とされています。

Im Entwurf für das Selbstbestimmungsgesetz ist klargestellt, dass die Bewertung sportlicher Leistungen unabhängig von dem aktuellen Geschlechtseintrag geregelt werden kann. Das heißt: Die Länder können hier im Rahmen ihrer Zuständigkeiten passgenaue Lösungen entwickeln.

Das Selbstbestimmungsgesetz wird die Autonomie des Sports nicht antasten. Nach geltendem Recht entscheiden Sportvereinigungen und Zusammenschlüsse weitgehend in eigener Zuständigkeit darüber, welche Personen zu welchen Wettbewerben zugelassen werden. Daran wird sich nichts ändern.

Das Selbstbestimmungsgesetz (bzw. ein bestimmter Geschlechtseintrag) wird keinen Anspruch auf Zugang zu geschützten Räumen vermitteln. Die bestehende Rechtslage in Bezug auf die Vertragsfreiheit und das private Hausrecht bleibt durch das Gesetz unberührt. Wie bislang sind gesetzliche Grenzen der Vertragsfreiheit zu beachten (z.B. die Grenzen durch das Allgemeine Gleichbehandlungsgesetz / AGG). Danach ist eine Zurückweisung speziell von transgeschlechtlichen Personen allein aufgrund ihrer geschlechtlichen Identität unzulässig. Unterschiedliche Behandlungen wegen des Geschlechts sind zulässig, wenn es dafür einen sachlichen Grund gibt (§ 20 AGG). Das kann insbesondere der Fall sein, wenn die unterschiedliche Behandlung dem Bedürfnis nach Schutz der Intimsphäre oder der persönlichen Sicherheit Rechnung trägt (§ 20 Absatz 1 Nummer 2 AGG). Auch insoweit wird sich durch das Selbstbestimmungsgesetz nichts ändern. Das heißt: Was heute im Rechtsverkehr zulässig ist, das ist auch künftig zulässig.

Bundesministerium der Justiz(連邦法務省)によるQ&Aはこちらからご覧になれますので、ご興味のある方は是非ご一読ください。

URL:https://www.bmj.de/DE/themen/gesellschaft_familie/queeres_leben/selbstbestimmung/faq_selbstbestimmung/faq_selbstbestimmung_node.html

生まれながらの性や名称に違和感を感じ、変更を希望する人たちにとっては非常に画期的な法ではありますが、一方で「Übertriebene politische Korrektheit(過剰なポリティカルコレクト)」であるという批判の声もあります。

今現在オリンピック大会の女子ボクシングの試合に於いて、女性競技への参加が疑わしいとされる人物が話題になっています。自らの意思で性別変更をしたいわゆる「トランスジェンダー」ではなく、性分化疾患がある選手だということが論点となっていますが、メディアによって「生物学上の男性」であったり「女性として生まれ育ったれっきとした女性」などと異なる形容がなされています。過去に遡って幼少期の様子はどうだったか、両親からの証言、女性である証拠とされる文書の提示があったことなども報じられていますが、今後ドイツでこのような報道がなされることはご法度とされます。本人が自認、自称するべき内容が尊重されます。しかし上述の通り、スポーツ大会などに於いて参加の可否決定は主催者側にあり、その他契約の自由も保障されています。「客観的な理由」があれば男女の差別・区別は許容されます。これらの権利同士がぶつかる際に、個々の場面でどのように対応がなされて行くのでしょうか。

現在の段階で、どのくらいの人々が性別や名称の変更を希望していて、実際にどのくらいの申請が行われたのかはまだ分かりません。ドイツ社会における「多様性」がどのようになっていくのか、今後の動向に注目です!

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