本日、ミュンヘン大学(LMU)にてDSHを受験して参りました。今回は受験日の様子について書きます。
試験開始時間の2時間以上前に、頭が非常にボーッとする中、ミュンヘン大学(LMU)のグロースハーダーンキャンパスに向かいました。今朝7時に夜勤を終えて、そのまま起きておいた方が良いか、少しでも寝た方が良いのか迷いましたが、試験時間は長いし、また今夜も夜勤だし…ということで結局自宅でちょっとだけ寝ました。結果、起きた際に変な疲れが襲って来て、エナジードリンクやらコーヒーを飲みまくりましたが、シャキッとした気分にはなりませんでした。目覚ましを掛けておいた時間よりも早い時間に目が覚めたし、自宅でボケーッとしているくらいなら…ということで、早めに試験会場に向かったのでした。
僕は過去にミュンヘンにてDSHを2度受験しており、今回で3度目の挑戦となります。前回の受験時は別の場所だったのですが、その前、つまり僕が初めてDSHを受験した際にも来た場所だったので、どんな試験会場かは把握済みです。今回の試験会場は、僕には嫌な思い出がある場所なので、以前の反省を生かして、今回は万全の態勢で臨むぞ!と意気込んでおりました。仲が良いクラスメイトたちには事前に教えてあげたことですが、この試験会場では座席の位置が超重要!なのです。
試験会場への入場時間が近付き、顔見知りの人たちの姿が徐々に見受けられるようになりました。大体同じクラスの人たちやら友達同士が集まって話しています。その隙に!扉が開いたらすぐに入室し良席を手に入れられるように、入口付近でスタンバイします。DSHを受験するのが今回初めてだという友人と、良い位置でスタンバイしていました。
試験会場への入場時間13時30分になり、一斉に生徒たちが試験会場に入りました。目指すは前方の中央の席!ということでダッシュしましたが、ここで思わぬハプニングが起こったのでした。なんと、席を誘導している男性がいたのでした。試験会場にはいつも、試験監督である先生1名と、語学学校のスタッフで、DSHの受験会場で必ず会う馴染の中国人の女性スタッフ1名…の他にもう1名のスタッフがいたのでした。僕はこれまで過去に2回もDSHを受験していますが、彼の姿を見るのは今日が初めてでした。雰囲気的に語学学校の先生ではなさそうでしたし、語学学校のスタッフにしては、非常に態度が高圧的で口やかましく、僕が知るスタッフの方々とは雰囲気が違い過ぎるという印象を持ちました。
僕は前方にはいたのですが、非常にイライラした感じの男性スタッフが数名の受験者の行く手をわざわざ阻んだり、独断で席を誘導しているように見えました。僕が希望していた座席は確保出来ず、ならば!と思って他の席に狙いを定めていると、彼に見つかり「そこ勝手に座るな!」と注意を受けてしまったのでした。実際、僕の前後にいた人たちは、勝手に座席についている人もいて、全員が誘導された座席に座っているという状態ではありませんでした。その男性スタッフが座席誘導している間にも、どんどん勝手に着席する人たちもいるし、僕が狙っていた場所はなくなってしまいました。これは埒があかん!なるべく前方なら!ということで、クラスメイトの友人と意を決して座席を確保すると、男性スタッフに「おい、許可してないぞ!お前らはそこに座るな!」と完全に目の敵にされてしまいました。僕は少々大きめの声で「Scheiße! 座席は自由に選べるはずなのに!」と言うと、それに怒ったスタッフは「Keine Scheiße! Geh nach oben!」と怒鳴って来ました。nach oben(後方の高い位置)になんて行ってたまるか!と思い、一度着席した席からは動かないでいたら、それ以上は彼は絡んで来ませんでした。
座席については、通路側の座席がその列全体の基準の位置となること、隣の受験者と2席分間隔を置かなければならないことくらいで、その他の特段のルールはありません。日本の高校やら大学受験、または検定試験の受験会場のような、座席に既に受験番号が記されていて「指定席」になっているわけでもありません。座席誘導をした男性スタッフは、きっちりと誘導し切れておらず、着席不可の場所に案内された受験者が、後に座席を変えなければならないという事態が発生しました。せっかく前方の座席を確保していたのに、後方上段の席への移動が余儀なくされたのでした。僕の友人もそれに該当してしまい、男性スタッフに抗議したところ「Sie haben kein Recht, Sitzplätze auszuwählen!(訳:あなた(たち)に座席を選ぶ権利はない!)」と怒鳴られていました。僕の友人以外にも、どんどん無意味に怒鳴られ、後方に追いやられる受験者の姿を目撃しました。僕や近くにいた恐らくDSHを受験するのが今回初めてではなさそうな雰囲気の受験者らが顔を合わせ「こんなのおかしいよね!」と言い合いました。どこに着席するか、上述のルールさえ守れば座席は自由に選べるはずです。男性スタッフは最初から興奮気味というか、イライラした感じの雰囲気で、彼と関わってしまったばかりに僕自身も非常にイライラしてしまいました。夜勤疲れもあり、精神状態も良くはない状態でテストが始まりました。
DSH試験は、毎度おなじみ
- Hören(聞き取り)
- Textproduktion(記述)
- Lesen(読解)
の順番で行われました。
まず聞き取り試験については、座席が前方座席ということもあり、全体的に声は聞き取りやすかったです。試験官の先生のテキストを読むスピードが独特でした。ところどころ「え⁈」と思ってしまうような単語が割と聞こえて来たものの、全体的に内容はそんなには難しくなさそう…という印象でした。しかし、ミュンヘンのDSHではおなじみの問題で、かつ配点がかなり高い「Textweitergabe」の箇所で盛大にミスをしてしまいました。この問題に相当する箇所が、短かったり長かったり、比較的簡単であったり難問であったり、「Textweitergabe」はテストの回ごとに難易度が違い過ぎる印象があります。今回は、テキスト自体の難易度はそれほどではないにしても、テキスト部分が長く、さらに僕自身が頭がボーッとしてしまって聞き逃したり、解答用紙に記入する時間配分をミスしたりと、後半部分はほぼ空欄で提出しました。「もうこれはダメだ!DSH3判定で合格なんてもはや不可能!」と、壊滅的な結果が既に予想出来ました。
休憩時間中に数人と話したところ「まぁまぁ出来たかも?」「難しかった」など印象はそれぞれのようでしたが、「Textweitergabe」の箇所については「模擬試験と違い過ぎるくらい長かった」「解答用紙のスペースが明らかに足りない」と不満の声が聞こえて来ました。それでもある程度の手応えを感じていたであろうクラスメイトたちに対して、僕は「もうアカン!再受験かな!」と投げやり気味に言いました。前方に座っていたとあるクラスメイトが、試験が終わり、後ろを振り返って僕の姿を見た際に、僕がどうやら物凄く悲惨な表情をしていたらしく「励まさなきゃ!」と思ってくれたそうでした。そんな悲壮感を漂わせたつもりはありませんが、力を出し切れなかった自覚は大いにありました。
次の作文試験では、テーマを見た瞬間に「うわぁ!」と思ってしまいました。テーマは、「Teilen(シェアすること)について」でした。「ドイツでは、物を他人とシェアする考え方は一般的である。時には家族や友人以外の人にも、さらに無料でシェア出来るとすればどういったものがあるか」という文章があり、「これは他人に無料で貸しても良い」と思われる物品アンケートのグラフが描かれてありました。設問では、グラフ描写、どういった物が許容されるか、グラフ(アンケート結果)から、どのようなことが推測出来るか、あなたの国では?あなた自身の物のシェアに関する経験は?シェアすることについて肯定的か否定的か…などということが問われました。
作文の試験では、文の構成と表現と文字数が重要視されます。前回のDSH受験時に、DSH3判定を取った当時のクラスメイトたちから聞いた話を総合すると、設問の問いを多少すっ飛ばしても、細かい文法ミスなどをしなければ、十分高得点は狙えるということが分かりました。元クラスメイトの秀才たちから「Struktur und Wortschatz sind wichtig!!!」とアドヴァイスされていたので、そこに集中することにしました。
ところで作文の試験中には、全受験者の出席チェックが行われます。スタッフが自分のところに来たら出席簿にサインします。予め机の上に用意しておいたパスポートを見せたり、持ち込みが許可されている独独辞典に不適切な書き込みや仕掛けがないかなどの点検が行われることもあります。
これまでは中国人女性のスタッフがご担当されていましたが、今回は、僕が既にバトルした男性が各受験者のところを回っているようでした。彼の姿が僕の視界に入った際、色々と気になる点がありました。無駄に受験者のペンや持ち物に触れたり、明らかに余計なおしゃべりをしているのが聞こえました。僕の隣にいた中国人の受験者には、パスポートを無駄に観察しては、「素晴らしいデザイン!中国人のパスポート、書式って美しいよね!僕、あなたの国のもの好きだよ!」などと言っているのが聞こえました。何に対してかは見ませんでしたが、あるものに対しては執拗に「Sehr schön!!! Toll!」 と褒め称えていました。
件の男性スタッフが、出席名簿を持って僕のところへ来たので、いつも通り漢字でサインしました。すると彼はマジマジと僕の名前を見て固まっていました。そして、ブツブツと何かを言っていました。さっき隣の中国人の受験者に色々言っていたのが聞こえていたので、漢字で書かれた僕の名前に感動でもしてくれているのか…などと一瞬思いましたが、何やら様子が変でした。
次の瞬間「こんなサイン、認められん!こんな文字誰が読めるんだよ!アルファベットでフルネームで書け!」と言って来たのでした。まさか僕のサインにいちゃもんを付けて来るとは。ちなみに、パスポートにも全く同じサインがなされています。パスポートのチェックをしたんだから、顔と名前(アルファベット表記)、そしてサインも確認出来るでしょうに。何より、ヨーロッパで「サイン」と言えば、1秒くらいでサラサラッと、もしくはぐちゃぐちゃっと書いたようなもの、記号のようなものでも「公に認められるサイン」です。何より、一試験会場スタッフにこんなことを言える権限ありますか?過去に受験した際にも同様に漢字でサインしていますが、これまで何も指摘を受けたことはありません。取り敢えず試験時間のロスを避けたかったので、彼の言うようにアルファベットでフルネームを書いておきました。すると「Sehr gut!」と満足そうに去って行ったのでした。
試験時間中、あまり僕にとって興味がないテーマで困っていたのに加え、男性スタッフにされたことに対して苛立ちが募ってしまいました。作文の試験では、僕はいつも時間めいっぱい消費します。無駄なことを考える余裕なんてないはずなのに、イライラし過ぎて集中出来ませんでした。そして、最後の「話のオチ」「締めくくり」の部分を書けないまま制限時間が終了しました。
ここまで2科目を終えて、DSH3判定への望みは完全に消え去りました。今回の試験のために、本気で勉強を頑張って来ましたが、実力を一切発揮出来ず「もう駄目だ!」と思い悲しくなってしまいました。
本日最後の科目の読解試験では、先程までの苛立ちや絶望に加えて、身体の疲労に悩まされました。エナジードリンクやコーヒーのパワーが発揮されたのか、眠気はありませんでしたが、身体のだるさ、頭がボーッとする感覚に襲われ、一切集中出来ませんでした。
テキストの難易度自体は、僕にとってはそんなに難しい内容ではなかったように思われます。しかしながら、脳がしっかりと機能していない状態で、同じ段落を何度も読み直して大幅に時間をロスしました。そして、読解試験の時間中には、文法問題の試験もセットで行われます。本来、時間配分は自分自身で行うものなのですが、ミュンヘンのDSH試験では、試験官が「時間になりましたので、文法問題に取り掛かってください」とお節介なアナウンスをします。無視して構わないものではありますが、かなり多くの問題を残した状態でしたし、かなりプレッシャーとなってしまったのでした。
文法の問題の部分は、読解試験のテキストの内容の書き換え問題が出るので、文法問題をサラッと一読するだけでも一応内容の要約を兼ねていたりもします。なので、文法問題を早くやっつけて、読解問題に戻るという戦略に切り替えました。
しかし残念ながら、今回の文法問題は僕にとってはかなりの難易度に思われました。スッキリとした気分で解けた問題はほぼなく「これで…合ってる…かな?合っていてくれ!」という思いで解いた問題ばかりでした。
本日の試験が終わった頃には、何とも言えない疲労感がありました。クラスメイトが見たと言うような、絶望的な表情を僕はきっとしていたに違いありません。周囲には、本日の筆記試験全科目を終えてスッキリした表情の方々が多かった中、僕は決して明るい気持ちにはなれませんでした。僕自身の試験結果予想は、DSH1判定もしくは落第点です。「自分らしくない」と思う程、空欄だらけの解答用紙を提出しました。せめて何か適当に書けば良かった箇所がありましたが、時間配分を失敗して何も書けませんでした。今回DSH3判定を取って、語学学校生活を終える!という当初の目標は、来年以降に持ち越しになりそうです。
過去のDSH受験時は、テスト前日やテスト当日は有給休暇を使ったり、シフトの交代休を利用するなどして仕事は休みにしていました。今回は僕が中途半端な時期に転職し、休みの計画が立て辛い状況で休みが取れず、気合で乗り切るしかないという状況でした。案の定、夜勤疲れが結構響いたように思われました。また、あまり他人のせいにはしたくありませんが、試験会場にいた男性スタッフは本当に迷惑な存在でしたし、色々と許せないなと思いました。帰りの列車の中では、クラスメイトたちと彼の悪口を言いまくってしまいました。
僕は今回、DSH内部受験生枠で受験致しました。この時期には、DSH外部受験生枠という別日程の試験日もあります。語学学校の授業に参加しなくても、そして内部受験生枠の受験代金より少々高いお金を払えば受験可能です。何と、クラスメイトで外部受験生枠の方も受験するという強者がいることが分かりました。今回の出来が悪過ぎたし、僕もそうすれば良かった…と思いましたが、時既に遅し。噂では、外部受験生枠の試験は、内部受験生枠に比べかなり難しいとも言われていますし、受けたところで同様に玉砕する可能性も無きにしも非ずです。
いずれにせよ、今回もやれるだけのことはやりました。今回は運がとにかく悪かったなと思いながら、DSH3判定を目指して、引き続き腐らず、今後もドイツ語の勉強は頑張ろうと思うのでした。