【D】ドイツでの「侮辱罪」成立要件とは

Leben

アパートの郵便の中身を確認すると、検察からお手紙が届いておりました。僕はとある件で、とある方から訴えられ、そして訴えている状態だったのでした。今回は、ドイツでの「Beleidigung(侮辱罪)」について書きます。

まず、事件が起こったのは昨年・2023年7月15日のことです。当ブログの別記事にて既に紹介しておりますが、不審な女性が僕の職場に侵入、その後暴れまくったり叫びまくったり、僕の職場にてあらゆる場所に唾を吐きまくったり、周囲の人々を巻き込み、平和だった夏の夜に色々と事件を起こしてくれたのでした。

その女性は全くその場にいる理由も権利もなく、再三に渡り出て行くようにお願いするも、目に見えない何かと戦っておられた彼女は「私はさっきこの男(周辺にいて酒を楽しそうに飲んでいただけの男性)に刃物で襲われたの!」と僕に必死で訴え「私に生命の危機が迫っている!警察を呼んでちょうだい!」と呼ばれたので、僕はその女性を排除する目的で警察に電話連絡しました。警察官が僕の話を一回で理解してくれなかった為、何度も同じことを説明しているうちに、その女性が「お前、今何と言った?私が困っているから警察を呼べとお願いしたのに、私をこの場から立ち退かせたいだと?!お前はドイツ語が話せないのか?!」と僕にブチ切れて来たのでした。その後、警察官が僕の職場に到着するまでの間、唾を吐きまくるし、僕に対して暴言を吐きまくるで大変でしたが、彼女は警察官が到着してからも落ち着くことはなく、状況はむしろエスカレートし、警察官たちも手に負えないというような状況でした。

さて、今回僕が面白いなと思った点は、検察から昨年7月の件で、今頃僕宛に2通の手紙が届いたということです。

  1. Ermittlungsverfahren gegen Sie wegen Beleidigung(書類発行日・2024年1月12日)
  2. Ermittlungsverfahren gegen M.B.V.(※手紙には本名フルネームが記載されています) wegen Beleidigung(書類発行日・2024年2月16日)

よく分かりませんが、1通目には、お騒がせ女性(V氏・仮名)側が僕を「侮辱罪」で訴えているという内容が書かれていて、そちらの手続きが打ち切り・終了した旨の手紙でした。

検察からの手紙の決まり文句ですが「Das Ermittlungsverfahren habe ich gemäß §170 Abs. 2 der Strafprozessordnung eingestellt.」と書かれてあり、手続きが打ち切り、つまり、この件に関しては事件化せずに終了を意味します。ちなみに、V氏(仮名)が僕を訴えた具体的な内容については一切記載されていません。何を以て僕から侮辱されたのでしょうか、僕が言ったとされる言葉やら行動に関する記載が一切ありませんでした。実際に侮辱発言を受けたのは、僕の側です。そもそも、現場では彼女は僕から暴行を受けただの、刃物で襲われたなどと言っていたように記憶してます。捜査対象が「Beleidigung(侮辱罪)」となっていることに強い違和感を覚えました。

後に届いたもう一方の手紙は、僕からV氏(仮名)への侮辱罪で訴えているという内容についてでした。こちらに関しても「Das Ermittlungsverfahren habe ich gemäß §170 Abs. 2 der Strafprozessordnung eingestellt.」と書かれてあり、事件化せずに捜査は打ち切られました。

しかし、1月の書類と異なり、随分具体的に書かれてある内容でした。色々と興味深い内容ですので、紹介致します。

書面に実際に書かれてある内容は、少々僕が実際に言われた内容とは異なると言うか、随分足りない部分があるのですが、僕がV氏(仮名)から言われた内容は、

  • お前のドイツ語は下手である。それに比べて私のドイツ語は素晴らしい!
  • アジア人はみんな勉強しない、出来ない、そしてドイツ語がヘタクソである!
  • 国に帰れ!この社会に役に立たないクズ!

という内容でした。僕が困っていたところに助けに入ってくれたコリアンカップルに対しても、随分と酷い物言いでした。ただ、そのコリアンカップルがその場で大笑いしてくれた為、僕も怒りがそんなに湧かず、平気でいられました。居合わせた警察官から「彼女を訴えることが出来るよ!」と言われましたが「我々アジア人はこんな悪口は言われ慣れてますし、どうでも良いです!」と告訴の意思はない旨は伝えたはずでした。しかしこの手紙が届いたということは、まるで僕が訴えを起こしたかのような状態になってしまっており、こちらに関しては別の違和感を覚えたのでした。

届いた手紙をざっと読んでいた際に「お前の男性器は小さい!」「お前は最低だ!」などという文言が目に入りました。これは僕には覚えがないぞ?!と思っていたら、どうやらV氏(仮名)から駆け付けた男性警察官に対して言われた内容のようでした。そして、一緒に居合わせた女性警官に対しても、警察官としての価値がないなどという言葉を浴びせたようでした。

これはもしや、警察官側が悔しかったから僕が訴えているということにしたかったのか…?そもそも僕が訴えているというはずの内容に、僕が知りえない警察官とV氏(仮名)とのやり取りが記載されているのは不思議ですし、仮にその内容を僕が直接聞いていたとしても、僕がその件でV氏に対して侮辱罪を求めるのはおかしいです。こんな僕に直接関係のない内容まで記述されるのは珍しいなと思いましたし、興味深く手紙を読みました。

ところで、ドイツ国内の弁護士によるブログやQ&A等を読んでいると、「侮辱」に該当する表現について、次のように書かれてあります。

Strafbar sind zum Beispiel Beschimpfungen („schwule Sau“, „Arschloch“, „Idiot“) oder das Behaupten unwahrer Tatsachen, die die Person verächtlich machen können („Sabine kokst schon wieder. “). Eine Beleidigung kann auch durch eine Handlung begangen werden, als sogenannte tätliche Beleidigung (Mittelfinger, Anspucken).

どうやら、その辺からでも普通に聞こえて来そうな悪口表現でも「侮辱発言」に当たるとのことです。本当にこれらの言葉で「侮辱罪」を求めることは可能なのでしょうか。悪口に対する評価は難しいところではありますが、上記の例であれば、„Arschloch(ケツの穴)“, „Idiot(馬鹿)“などは、一般的と言うのは変ですが、言う人が多く、まるで関西弁の「アホ」「アホちゃうか」くらいの軽い表現のようにも思えます。

今回の件で、実際にV氏(仮名)より発せられた言葉の内容は、十分に差別的であり、侮辱的な表現であると言えます。僕の件に直接関係はありませんが、警察官が言われたとされる言葉も、十分侮辱発言であると思われます。特に容姿であったり、簡単に変えられない部分に関する内容を揶揄することは、ドイツではタブーであると聞いたことがあります。

しかし、言葉による暴力は、言った言わないなどの問題が生じます。証拠保全のため録音していたとなると、「盗撮・盗聴」の問題に抵触します。信頼のおける第三者の証言があれば、十分な証拠として評価されます。今回の場合は、警察官が複数いる状態で、さらに警察官たち本人たちもある意味被害を受けた状態でしたが、V氏(仮名)には何の御咎めなしとの判断が下されたのです。

以前別の記事でも書きました通り、僕の私見ですが、単なる悪口と評価されかねない内容では訴えは不可、暴力行為や脅迫などがセットでないと警察も裁判所も動いてくれなさそうです。よくインターネット上でも話題になっているようですが、ヨーロッパで暮らしているアジア人たちが受ける、日常的な侮辱発言に関しても、警察は基本的にはまともに取り合ってくれません。この点についてはなんとなく分かっていたので、上述の通りコリアンカップルとともに、本気で侮辱をされたとして受け止めず、僕の中では流したつもりでいました。V氏(仮名)について訴えてやろうなどという気持ちは、毛頭なかったわけですが、今回は何故か僕の意思に反して彼女を訴えたことになっており、さらに事件化もせずに「やっぱりな…」という結果となったのでした。下手に訴えを起こすと、相手方に自分のフルネームも知れ渡りますし、中途半端に関係性が生まれてしまいます。どうしても耐え難い内容で、相手を懲らしめたい!という強い意志がない場合は、訴えを起こさず、さっさと忘れてしまうのが賢明かもしれません。

ところで今回の件では、さらに続きがあります。

Das Verfahren war einzustellen. Nach den durchgeführten Ermittlungen leidet die Beschuldigte an einer psychiatrischen Erkrankung, aufgrund derer nicht auszuschließen ist, dass die Fähigkeit der Beschuldigten, das Unrecht ihrer Tat einzusehen oder nach dieser Einsicht zu handeln, zur Tatzeit aufgehoben war. Vor diesem Hintergrund kann gegen die Beschuldigte keine Anklage erhoben werden, da nicht auszuschließen ist, dass sie zur Tatzeit schuldunfähig war und folglich nicht bestraft werden kann (§20 StGB). Die Voraussetzungen des § 63 StGB liegen nicht vor.

V氏(仮名)は精神疾患を患っており、責任能力が怪しいなどということが書かれてあります。当時のV氏(仮名)は、通常の会話ですらも成立せず、激昂してからの様子は明らかに常軌を逸している様子だったので、精神疾患の可能性は十分に考えられました。色々と被害を被って嫌な思いをしたものの、このように相手が「特殊な状態」の方であれば、法的にも責任を問うことは出来ません。

僕はこれまで、ドイツ国内で色々とこういったようなことを経験して来ましたが、「侮辱罪」は僕の人生には関係がない法律、別に困った際に守ってくれるものではないお飾り規定くらいに思った方が良いのかと思ってしまいました。

今回の件を通して、僕から他の方々へアドヴァイス出来ることがあるとすれば…。

面倒な輩に絡まれたら、戦わない、相手にしない、直ちに逃げるべし!

これに限ります。

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