先日同僚の仮病の都合でドタキャン、延期されてしまいました、社内紛争解決委員会による面談が本日行われました。今回は、その面談の内容及びその感想について書きます。
上司からの予告通り、本日は社内紛争解決委員の担当者の女性(Frau T)と会うことになっていました。僕の夜勤が朝6時半に終わり、面談が8時半から行われるという、なかなか体力的にはしんどい時間設定だったのですが、リスケジュール後担当者のFrau Tと予約が早くに取れるタイミングがこの枠しかなかったようなので仕方ありません。今回話題となる、僕に執拗に嫌がらせをしてくるスタッフAに関してですが、彼は「一応病欠」ということで1週間程度休んでおり、本日から仕事復帰ということになっていました。今朝5時半にその彼から具合が悪そうな感じの声で職場に電話があったので、まさかまた病欠延長か?!と思い一瞬ヒヤッとしたのでしたが、職場への到着が10分程遅れるとの連絡でした。社内紛争解決委員会の意向として、まず最初の第1回面談は、僕とスタッフAは別々で個別面談、個別の聞き取り調査が行われるとのことですが、互いに顔を合わせることはないものの、両者との面談は同日中に行われなければならないとのことでした。前回は、予定日の前日スタッフAが病欠との連絡をしたことで、予定そのものがキャンセルになってしまったのでした。今回は、スタッフAが仕事には遅刻して来たものの、問題なく予定通り面談が遂行される運びとなったのでした。
面談は、とあるホテル内の一室で行われました。面談者のFrau Tと合流し、簡単に自己紹介と経緯説明をしました。
「本日は私のために時間を割いてくださりありがとうございます。本日はどのくらいの時間が許されているのか不明だったことと、時間に限りがある中、上手に要点を伝えられるかどうか不安だったので、資料を準備して来ました!」と、用意した資料を渡したところ、いきなり書類は机の端に置かれ、一切読んで頂けなさそうな雰囲気でした。一瞬でもこちらが渡した書類を見てくだされば良いのにと思ったのですが「まずあなたの話を聞きます。書類は後で!」と言われてしまったので、僕は「まず書類を見てくれ!」という願いを込めて必殺技を使いました。
「Leider ist mein Deutsch nicht gut, aber wenn Sie die Unterlagen einmal anschauen, können Sie meine Situation besser verstehen.(訳:残念ながら私のドイツ語は上手ではありません、しかしその書類を一度読んで頂ければ、私の状況をよく理解頂けます)」とややわざとらしくたどたどしい感じで言い、書類を一生懸命準備したアピールをしてみました。すると、どうにかササッと最初の1ページ分は読んで頂けました。外国人の見た目をしていてやや自信なさげに「私のドイツ語は上手ではありません」は、色々なところで使える必殺技です。ドイツ生活10年を超えている今でも、僕は戦略的にこのフレーズを利用しています(爆)
僕はまず準備した書類を読んで頂きたかったのですが、Frau Tは僕の目をじっと見つめながら、どういった感じで話をするのか様子をしっかり観察しているような感じがしました。彼女は僕の話について一切メモなどを取ることもありませんでした。作り笑いのような表情で、ただひたすら目をしっかり見つめて、彼女から目を逸らすことはほとんどなく、圧迫面接のような雰囲気でした。僕が一通り話し終えた後に、まずFrau Tに言われた一言は「凄く細かい間違いはいくつかあったけれど、別にあなたが言っている内容は全て分かったし、あなたのドイツ語力に全く問題はありません」とのことでした。
実は僕のドイツ語レヴェル云々の件に関しては、僕が準備していた書類の前段の導入部分にも掛かっているところなので、重要な要素でした。僕に嫌がらせをしてくるスタッフAが、僕に彼の業務を押し付けて来た際に「お前の労働契約書に書いてあるはずだ!契約書も読めないのか?!お前はドイツ語も出来ないのか?!馬鹿が!」と罵られたことがあったからです。過去の記事でも紹介しておりますが、スタッフAが僕に嫌がらせをして来るようになったきっかけは、彼が自分自身が楽したいがために、当時新人スタッフだった僕に彼の早朝業務を押し付けようとしたところ、僕がきっぱりと「それは僕の業務ではない」と拒否したため、そこで逆恨みをされたことでした。また、出会った頃からスタッフAが僕に対して攻撃的で、僕のことを非常に見下している侮辱発言があったという部分は、どうしても伝えたい部分だったのです。
それから1年が経過した頃に、上司を含めて一緒に話し合いをする機会が設けられ、上司からスタッフAに対して「彼の業務内にはあなたの仕事は含まれない」と伝えてくれ、僕を擁護してくださる感じでした。その後スタッフAが不服そうな感じではあったものの「もうこれ以上話したくない!この件は終わりにしましょう!」と言って話し合いは終了、その後も一旦は落ち着いたように思われました。一瞬僕にフレンドリーに色々と話し掛けて来た時期もありましたが、それは長く続きませんでした。スタッフAが無断遅刻を3回もしたせいで、僕が急遽彼の業務を手伝うことになったことがありました。その際に感謝の言葉も謝罪の言葉もなかったので、僕はそのことを上司に報告しました。すると彼は「この告げ口野郎!遅刻なんてしていないし、お前が言っている内容は嘘だ!嘘つき!」と逆切れし、そこからまた執拗な嫌がらせが始まり、それが現在に至るというところまでは話すことが出来ました。
しかしその後、Frau Tは僕の話は半分に、ごそごそと小道具を準備し始めました。おもちゃのボーリングのピンのようなものやメダルなどを取り出して、あなたの今の状況をこの机で表現してくださいと意味不明な指示をして来たのでした。また、本当に意味が分からない、質問の意図が分からない質問をいくつかして来たので、僕はかなり困った顔をしながら「すみませんが意味が分かりません」と言ってしまいました。すると、彼女は別の言い回しをすることなくただただ同じ内容を繰り返しただけだったので、僕は「言葉が聞き取れなかったのではなくて、あなたの質問の内容とどう答えたら良いのかが分からないのですけど…」と答えると、ようやく「質問を変えます!」と話題を切り替えました。
「この机の上はあなたの職場です。まずあなた自身を表すものを選んで、その位置を設定してください。その後、スタッフAはどの位置にいますか?その他、環境を自由に表現してみてください」と言われたので、ボーリングのピンのようなものの青いものを自分自身と見立てて、机の中央に配置、僕が普段仕事をしているカウンターのパソコンを見ながら仕事をしている様子を表現しました。その斜め後方の位置から黒いピン(スタッフA)がこちらを見ているという風に表現をしました。また、黒いピン(スタッフA)をちょいちょい動かしながら、彼が仕事をしつつ僕に嫌がらせをしてくる様子、僕がメダル(分厚い壁)で仕切られたオフィスに逃げ込む様子も表現しました。その様子を見たFrau Tは、それまで作り笑いのような笑みを浮かべ、口角を何度も上げていた表情から一気に、強張った表情へなっていったのでした。
「この状況は…非常に良くありませんね!」と、かなりドン引きしたような感じでおっしゃったのでした。この作業に何の意味があったのかよく分かりませんが、何度も「wirklich unangenehm!(訳:本当に不快である)」との表現を用いていました。僕にとって、スタッフAの存在自体が非常に不快であるし、部署も仕事内容も全く関係ない人が、執拗に絡んでくること、僕が仕事上ミスをした、会社の備品やら設備を破壊したなどの嘘をつかれて攻撃をされている点にも言及しました。僕が仮に仕事でミスをしたとして、スタッフAの業務には何ら影響がないことも伝えました。
次にFrau Tは紙を取り出し、Sender(発信者/スタッフA)とEmpfänger(受信者/スタッフK、僕のこと)とそれぞれ紙の左端、右端に書き、真ん中には「Du musst mir helfen!(訳:お前は私を手伝わなければならない!)」「Du musst das machen!(訳:お前はそれをしなければならない!)」というフレーズを書きました。そして次のように説明をしました。
「さて、これはSenderのスタッフAから、Empfängerのあなたに向かって発せられた言葉です。このセリフには、4つの解釈が考えられます。まずはニュートラルなSachebene(事実の側面)、感情などは一切考慮しません。その他、 Appell(アピール)、Beziehung(関係)、Selbstoffenbarung(自己開示)の面があります。あなたが感じている彼の言葉は、Appellとして感じ取られていますね。しかし、これを言う相手が異なれば、この言葉の意味合いも変わってきますね?」と話しました。
何となく、ここでFrau Tが仰りたい内容が分かった気がしました。要は命令口調のセリフで言われたとしても、別に何も感じない場合や、納得出来る場合、どうしてあなたにそんな言い方をされなければいけないのか?!と反発したくなる場合などが考えられます。僕の率直な意見は、Sender(言葉の発信者)との関係性やその状況、言い方などによります。上記のセリフは、僕の上司であったり、仲が良いスタッフから普通のトーンまたはフレンドリーな感じで言われたら、助動詞「müssen(訳:しなければならない)」に嫌悪感を抱くことはないでしょう。しかしながら、部署も業務内容も関係のないスタッフAから、アグレッシヴな口調で言われたら、到底受け入れられるものではありません。
僕はその後のFrau Tが恐らく持っていきたいであろう話の方向が予測出来たので、やや牽制しました。「現在の職場・状況に於いて、スタッフAが僕にこれらの言葉を言うこと自体が筋違いであるし、受け入れられるものではないです。見方を変えて良い風に解釈しようなんて無理です!あと、僕が何か変わらなければならないことは何ですか?スタッフAによる根拠のない誹謗中傷や、嫌がらせを止めさせたいんですよね!上司からはこのようなメールが来ていますが(印刷したものを見せながら)、あなたたちがお互いにシフトが被らないように工夫しますとの返答が1回あっただけで、僕が普段からレポートしている件について返答がないことがほとんどだし、どれほどこの件に関心を持って取り組んでくださっているのかは一切不明です。シフトが被らないようにということも完全には不可能だし、根本的な解決にはなっていないんですよね。スタッフAがこれ以上嫌がらせを止めないなら、上司からはAbmahnung(警告書)を発令してもらいたいですし、上司が動いてくれないなら訴訟も検討しています!」と言いました。
すると、Frau Tは難しい表情をするようになりました。僕は続けて、スタッフAのための準備した手紙を渡しました。手紙の内容の「この1番の部分は、非常に挑発的で、この件であなたが逆に訴えられる可能性がありますね!あなたの気持ちは分かりますが、私はこの手紙は本人には渡さない方が良いと思いますよ!」とのアドヴァイスがありました。実はこの過激な文章は、以前スタッフAとの口論の際に話題とした部分で、僕はわざと狙って書いたものです。それに、訴えてくださるならどうぞ!という感じである旨も伝えましたところ、Frau Tは「ドイツ人がよくやりがちなとあるリアクション」を示し、僕との面談を終わらせに掛かりました。
僕は途中で分かってしまったのです。このFrau Tは僕の話の内容そのものにあまり興味がなく、まるで自己啓発セミナーの方の講演、コーチング講座のような感じで「考え方を変えましょう!」「ポジティヴシンキングが~」「ストレス解消のために何か出来ること」的な話に持っていこうとなさっていたことを。僕はそんな内容は期待していませんし、別に聞きたくない話です(爆)具体的な状況の聞き取り調査があって、真剣な感じの話をして頂けることを期待していたので、よく分からない心理テストのようなものをされたり、内容も微妙で、今回の面談は完全なる期待外れでした。僕の後にスタッフAが呼び出され、このFrau Tがお話をすることになっているのですが、一体どうなるのやら、という感じです。
ちなみに、Frau Tが紹介したかった、多分メインでお話をされたかったであろう話の根幹部分の「4-Ohren-Modell(ド直訳:4つの耳モデル)」については、「もし興味があるならば、ご自身でインターネットなどで探してみてください」と言われましたので、早速調べて日本語に訳し、まとめた内容を以下に書いておきます。
4つの耳モデル(4-Ohren-Modell)は、ドイツの心理学者フリーデマン・シュルツ・フォン・トゥーン(Friedemann Schulz von Thun)が提唱したコミュニケーション理論で、「1つのメッセージには4つの意味がある」とする考え方です。これは話し手と聞き手の認識のズレや誤解が生じる理由を説明するためのモデルです。
4つの側面(=メッセージの4つの次元):
1. 事実の耳(Sachebene)
→ 「何が言われているか?」事実・情報としての内容。
例:「信号が青になりました」=信号が青であるという事実。2. 自己開示の耳(Selbstoffenbarung)
→ 「この人は自分について何を伝えたいのか?」話し手の気持ちや性格、価値観。
例:「信号が青です」=話し手は急いでいる、あるいは交通ルールに厳格な人かも?3. 関係の耳(Beziehungsebene)
→ 「相手は私をどう見ているのか?どういう関係でいたいのか?」
例:「信号が青です」=「あなたは気づいていない」「私はあなたより状況を把握している」といった上下関係の含み。4. アピールの耳(Appellebene)
→ 「何をしてほしいのか?」命令・要望・勧めなど。
例:「信号が青です」=「早く渡りましょう」このモデルは、*話し手が意図する側面と、聞き手がどの「耳」で受け取るかによって誤解が生まれることを示しています。
例えば:
上司が「この書類、ミスがあるね」と言ったとき、
– 事実の耳:間違いがある
– 自己開示の耳:上司は細かい人だな
– 関係の耳:私の仕事ぶりを批判している?
– アピールの耳:やり直せと言っているのか?といった具合です。
*このモデルは職場、家庭、友人関係などあらゆる人間関係での誤解を防ぐヒントになります。
Frau Tとの話の中でよく分からなかった部分があったのですが、自分で調べてみて理解が深まりました。関係の耳(Beziehungsebene)は、話者の実際の属性は関係なく、「相手は私をどう見ているのか?どういう関係でいたいのか?」の視点から考えるもの、ということのようです。
Frau Tについても、インターネット上でプロフィールを調べてみたのですが、「自己啓発コーチング、女性へのキャリアコーチング、キャリアトレーナー、キャリアアドヴァイザー」という肩書の方のようでした。今回の面談の最初の方の様子から心理学者さんかな?と一瞬思ったりもしたのでしたが、そうではないようでした。僕が働いている会社の社員ではなく、外部委託のスタッフということも分かりました。また今後彼女と話をすることがあるのかどうか分かりませんが、次回(第2回目)は、スタッフAも交えて調停のような感じの話し合いの機会となる、という認識です。
面談の最後にFrau Tから「スタッフAの進退や人事異動に関しては、あなたの上司が判断することなので、私からは何も言えません。この後スタッフAとあなたの上司とも話をすることになっているので、今後のことはまたあなたの上司から聞いてください。あと、今回の話し合いのフィードバックをあなたの上司宛にお願いします。最後に、あなたのドイツ語はレヴェルは決して低いと人から言われるようなレヴェルではありませんよ。ドイツ語母国語話者の私が断言します。これまで一生懸命勉強されたのがよく分かります。今後も頑張ってください!」と言われ、面談が終了しました。
フィードバックについては、明日以降もスタッフAとは出勤日が何度も被っており、顔を合わせる機会があるので、彼の様子を見ながら判断します。僕の本当の気持ちをここに書いておきますと「夜勤後の疲れた体で2時間程、有意義に感じられる話ではなかった上に、ただただしんどかった」です。とはいえ、せっかく上司がこのような機会をアレンジしてくださったわけなので、上司には一言お礼を伝えるつもりです。
ところで、次にまとまった休みがあれば、旅行でもしてリフレッシュして参ります。「ストレス解消のために何か出来ること」は、僕の場合は旅行です。旅に出て美しい景色を見たり、美味しいものを食べたり、旅先で素敵な人たちに出会えたら、スッキリ嫌なことを忘れられそうな気がします。今後スタッフAに嫌なことを言われたりされたら、その勢いで旅行を計画しまくる、というのも悪くないかもしれませんね(爆)
また、ジムでのトレーニングも一応続いております。筋トレはストレス解消に良いと言われていますし、引き続き頑張って、ダイエットも成功させたいものです。痩せて見た目が変わる頃、スタッフAからの嫌がらせが続いていたとしても、気にならなくなっているだろうか…。